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    <updated>2006-04-26T13:33:56Z</updated>
    <subtitle>THE STORY OF MY LIFE</subtitle>
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    <title>ICEBERG</title>
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    <published>2005-12-01T09:00:02Z</published>
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    <title>EPILOG</title>
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    <published>2005-11-29T09:00:00Z</published>
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    <summary>　夜明けの中に横たわっている。出版社の人へ、この最後の章を書いているんだ。...</summary>
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        　夜明けの中に横たわっている。出版社の人へ、この最後の章を書いているんだ。
        　こんな風に思ってる、「ぼくみたいに、人生のほとんどをくだらない職業に身をささげて、社会人にもどれた人間がいただろうか？ どう考えても、ぶっ壊れて終わると思ってた。もしくは、刑務所で孤独に死んでいくと予想してた」

　廊下をはさんだベッドルームに、３つの理由が寝息をたてている。ピースフルで、幸せな顔。ふつうの社会でぼくが生きていくのが、どれだけハードで、凹ませられるか、さとられないようにしてるけど。

　ふつうの社会って、ぼくには奇妙なんだ。この５年間、必死でなじもうとしてきた。ナゾナゾみたいな社会に。

　美しい奥さん、キャサリンは素晴らしい人。励ましてくれる。かわいい２才の女の子と、たくましい３才の男の子のパーフェクトな母親。

　カタギの社会っていうけど、ホントにそうなのかな。辛い経験をたくさんしたよ。結婚してから、求人広告でセールスの仕事を志望したのがどれだけテキトーだったか、すぐ思い知らされた。

　もちろん、ぼくは優秀なセールスマン。３０年間も、ピンプとして証明しつづけてきただろ。どっちの世界でも、モノを売るって意味では同じだよ。白人の採用担当者だって、ぼくの話の上手さはすぐに理解できたようだった。生まれつきの資質を見抜いたんだ。

　でも、黒人の社員が優れてるなんて、他のすべての白人の社員がゆるさない。不愉快になって、怒って、ぼくはよく、家に帰らされたよ。すねてた。もういいや、ゲットーに戻ろうって、何度も考えた。キャサリンはいつも、正しい言葉をかけてくれた。愛してくれて、理解してくれた。

　辛いときも、ヘルプと励ましがあった。チャーミングで、偉大な女性。まえからママの友だちだった人なんだ。まるで、セラピストみたい。ぼくが置かれている状況をいい当てて、戦うための勇気をくれる。彼女がいると、感謝の気持ちが心に満ちてくる。

　ぼくの人生をふりかえってみると、友だちなんて、ほとんどいないんだ。この本を書きはじめる直前、すごく仲良くなった人がいた。でも、やっぱり違った。物事はなるようにしかならない。いずれ、本当の姿をあらわす。いいことじゃないか。ぼくは、いつだって尻にキツイ蹴りを入れられるたびに、強くなってきた。

　社会人としても、面白い出来事とか、ユーモラスな体験をいっぱいしたよ。でも、次にとっとこう。ぼくの小さな家族が、もうすぐ起きるから。ヒーターをいれなきゃ。こんな朝の寒さに、凍えてほしくないんだ。

　どうかな、アイスバーグなのに、あったかいでしょ？

- 終わり -
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    <title>DAWN</title>
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    <published>2005-11-28T09:00:03Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　囚人と看守もびっくりしていた。ぼくは生き残ったんだ。２４時間以内に釈放。４３才...</summary>
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        　囚人と看守もびっくりしていた。ぼくは生き残ったんだ。２４時間以内に釈放。４３才のほとんどを、独房で過ごしたことになる。
         「致命的な罠に囚われていた。だが、本当に脱出できたのだろうか。運命は、さらに非情な罠をセットしないだろうか。黒い肌を誇りに思えるだろうか。これまでの人生で、白人の世界の鉄条網から逃げられた黒人は、ほとんどいなかった。この厳しい現実を、ぼくは生きていけるだろうか？」

　時間と、心の中にある何かだけが、この質問に答えられる。

　もう、ママの他にだれもいなかった。服を着せられ、出所した。骸骨のような体にはだぶだぶだった。ぼくは、どうやって脱獄したのかを告白していなかった。囚人たちは祝福した。ぼくがどれだけ健闘したかを知ってるから。耐えられる確率の低さも。

　ママの友人が、交通費を送金してくれた。飛行機はネオンの海に浮かびあがり、ずっとまえ、空虚で孤独な夢を追い求めてやって来たシカゴが眼下にひろがった。

　ヘンリーのことを思い浮かべた。クリーニング屋のプレスマシンの音。ママは若くて美しかった。ロックフォードに戻りたいよ。彼女は、ベッドへきてくれた。優しいおばけ。キスをして、おやすみの挨拶をした。再会するまでの時間が、果てしなく長く思えた。

　病室へ入ったとき、彼女の小さく灰色の顔に、死があった。でも、瞳は輝いた。母の愛は尽きることがないんだ。ぼくをしっかりと抱きしめた。息子の到着は、奇跡。生きる力をあたえる魔法だった。

　６ヶ月のあいだ、ママはがんばった。ぼくは、ずっといっしょにいた。ツイン・ベッドにして、夜な夜な語りあった。残りの人生はちゃんとした仕事に就くんだよ、って約束させられたよ。結婚して、子どもを作りなさい、って。

　何十年も、口を酸っぱくしていわれてたんだ。とにかく無視してきたけど。会社員になるなんて、キツくてさ。最期の日、病院のベッドで、ママはぼくの目をよく見た。

　かさかさになった唇から、微かな声が漏れた、

 「ゆるしてね、お願い。ママはしらなかったの。ごめんね」

　ぼくは、彼女の最期の涙が、うつろになった瞳から冷たい頬へ流れていくのを見ていた。そして、すがりついた。

 「ママ、何にも悪くないよ。本当だよ。それでも、そんなこというなら、ぼくはゆるすよ、どうか信じて」

　病院を飛びだした。駐車場へいった。車のボンネットに倒れこみ、胸がはり裂けるくらい泣いた。でも、泣きやんだ。今度こそ、ぼくの言葉は伝わったはずだから。

　オッサンになったアイスバーグが、わんわん泣いてたんだ。この光景を見ているホーがいたら、タダじゃおかなかったと思う。
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    <title>THE STEEL CASKET 9</title>
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    <published>2005-11-26T09:00:43Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　２週間くらい、独房に寝ころがっていた。ぼくは、１０ヶ月で釈放されるのが合法的で...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　２週間くらい、独房に寝ころがっていた。ぼくは、１０ヶ月で釈放されるのが合法的である、という信念を紙に書きだした。なんとなく強引な理屈も入れておいた。すべてを暗記した。ひとりぼっちで、リハーサルした。やがて、ドラマティックな抑揚と流れるようなデリヴァリーが必要だと気がついた。あと２日で、１０ヶ月目が終わるという日。２度目の面談を申し込んでから、２週間。ついにオフィスへ呼びだされた。
        　ナチのような男の前に立ったとき、まるでスケアクロウみたいな姿だったろうな、ぼく。ひげ面で、汚くて、ぼろぼろ。奴はシミひとつないイキフンで、ぴかぴかの机の向こうに座っていた。人を小馬鹿にしながら。ぼくは語りだした、

 「警備隊長殿、職務に性急なる貴殿の態度が、わたくしの緊急なる面談の要請を、無視させていたように思われます。本日は、わたくしの合法的な拘束期限の履行という、非常に重大なイシューについてきっちりと議論させていただきたく、まいりました。
　貴殿はフェアな人間でなく、偏屈な黒人差別主義者であるとの噂がサーキュレートしておりますが、わたくしは即座に無視し、耳に入れないようにしてまいりました。貴殿のような市民的地位と知性の持ち主は、いっぽうでイルな評判と偏見を抱かれるものだという、わたくしのドグマティックなまでの信念があるからです。
　フェア・プレイの精神に基づきまして、失礼なくらい単刀直入になることをお許し願いたい。もし、明後日までに、わたくしを釈放して下さらなければ、市内に手配いたしました当方のエージェントが、わたくしだけでなく、この所内に日々、歴然と存在する多数の他の非合法的監禁、および不愉快なアクティヴィティを暴露すべく、一連のプロセスを発動いたします。
　ほぼ１０ヶ月に渡って、動物のように扱われてまいりました。おかげさまで、本物の動物みたいに、目や耳が研ぎ澄まされております。求めるものは、法の精神です。論点を明瞭にします、貴殿の合法的な代理人たる看守長殿がわたくしを逮捕したのです。たとえ月面のような場所であれ、３０日間拘束したのですから、当施設において、しかるべく処遇していただきたい。警備隊長殿、反論される余地は皆無に思われます。失礼なくらい真剣に、わたくしのリリースが合法的なスケジュールで履行されることを確信しております。サー、ご面談、ありがとうございました」

　かれの表情から、侮蔑が消えていった。ぼくは、ブラフじゃないと信じさせたんだ。リスクは避けたいと敵の目が語っていた。この腐った刑務所において、禁止された品目の差し入れがいかに容易であるか、奴もよく承知していた。エージェントにタコをあげることなんて、ガキの使いみたいなものさ。その夜、眠れなかった。朝、釈放の通知がきた。合法的なスケジュールで、出所することになったんだ！

- つづく -
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    <title>THE STEEL CASKET 8</title>
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    <published>2005-11-25T09:00:51Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　７ヶ月目、とても悲しい日があった。ニューヨークに到着して２日目で逮捕された泥棒...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　７ヶ月目、とても悲しい日があった。ニューヨークに到着して２日目で逮捕された泥棒が、上の階へ収監されたんだ。夜、同じ並びの囚人に呼ばれ、本を貸してやった。しばらくして、上からぼくの名前が聞こえた。次の朝、かれは、ぼくのところへ来た。
        　本当にアイスバーグなら、パーティータイムを知っているか、と訊く。イエス、と答えた。黙りこんだあと、かれはときどき、ぼくの話をしていた、と言った。一緒にハッスルしてたガキが、アイスバーグていう有名なピンプになった、って。

　パーティーは刑務所で、美しい売人の女と知りあった。で、モノにした。女は、パーティーの刑期を代わりに引き受け、犯罪から足を洗い、カタギになるよう尽くした。

　ところが、パーティーは逆ギレして、彼女の腕をヘシ折ってしまった。２ヶ月後、ヘロインをコップした。じつは、このときの売人は、彼女の親友だった。ヘロインだと思って買ったモノには、電池のアシッドが混ぜてあった・・。これを聞いて、眠れなくなった。

　不安の中で、結論を下す時がきた。ぼくは、ピンピンと麻薬にまみれてきた。いままで、こんな場所からは出たいと、本気で望んだことがあっただろうか。刑務所に入っても、何も学んでこなかったんじゃないか。心のゲームを終わらせたとき、見えてきたものは、救いようのない人生のパターンだった。

　ママの状況と、残された刑期が、この考え方に強く影響していた。さらに、年齢と、失った時間。ピンピンなんて、若い男がやるクダラナイもんだって、やっと理解したんだ。

　ぼくは、人生の半分以上を、しょうもない、危険な職業に費やしてしまった。きちんと８年間、学校にいってれば、今ごろは医者か弁護士になってた。なのに、みてみろ、確かに抜け目ない（slick）男にはなったけど、全然、賢く（smart）ない。偽札みたいな栄光のなかで４０年を過ごし、まともな職歴もなければ、未来もない。カタギの客なんかより、よっぽど大バカだ。あいつらは金を取られただけ。ぼくは、バーの向こう側にある、人生を台無しにするクラブに５回も参加してしまった。

　いいピンプは、プレッシャーを操る。だが、ある日、じぶんに跳ね返ってくる。そのとき、ピンプは犠牲者となる。ぼくは、ホーたちとの駆け引きや刑務所に、ウンザリしていた。

　９ヶ月目の終わりになっていた。オフィスに面談を申し入れた。釈放される日について、異議を唱えた。１１ヶ月ということになってたから。

　ここにブチこまれる前に、州刑務所に３０日間、拘留されてるんだ。このままだと、１年の刑期になる。法律は、ほとんど分からないけど。でも、面談では、ここに１１ヶ月いろ、といわれた。だが、これ以上監禁されて、何もかもゲロッてしまうことすら、もう怖くなかった。頭蓋骨は、完全にコントロールできていた。

　ママは、カリフォルニアでいつ死んでもおかしくない。最期の時がくる前に、行ってあげなくちゃ。ママのことを愛してるって、母親として感謝してるって、きちんと伝えなくちゃ。もう、ホーなんかどうでもよかった。ママが大事だった。ぼく自身のためと同じくらい、ママのために出所したかった。
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    <title>THE STEEL CASKET 7</title>
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    <published>2005-11-24T09:00:36Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　夜、はじめて声が聞こえた。消灯していた。監舎の中は静かだった。声は、ベッドのあたまのほうにある小さな格子窓からだった。
        　格子窓の向こうの通路は、いつも照明がついていた。通気口などのさまざまなパイプがある。ぼくは、手とひざをついて、小さな穴をのぞきこんだ。誰もいなかった。

　ベッドにもどった。だが、声はより大きく、はっきりと聞こえる。まるで、友だちを慰める女のように甘い。上の階の囚人たちが、からかい合っているのだろうか。

　やがて、ぼくの名前がよばれた。また身体を伏せ、格子窓に耳を近づけた。通路の角から、光があふれた。看守だ。身をよじったが、目が合ってしまった。

 「おい、何をやってるんだ」

 「いや、声がしたから。誰かが仕事してるのかと思って」

 「おや、おや、可哀想に。もう限界かな。スリムだっけ、おまえ、発狂したな。デタラメいうのは止めろ。さっさと寝るんだ」

　だが、光がまぶたの裏に焼きつき、眠れない。リロイのことが浮かんだ。起きあがり、ベッドに腰かけた。声について思い巡らした。まさか、夢なのだろうか。

　もう一度、看守に訊ねるべきか、迷った。ひとつだけ確かなのは、夢だろうと現実だろうと、ぼくは発狂したくなかった。遠い昔、年老いた哲学者のような囚人から聞いた話が、心に残っていた。頭蓋骨の中にあるスクリーン。また、連邦刑務所で読んだ本に書かれていたことを、覚えていた。頭蓋骨の内側にいる他人。

 「不吉な兆候がはじまった以上、じぶんの中の不安と戦うしかないんだ」

　声がしたとき、夢なんかじゃなかった。でも、また聞こえたら、心を守ろう。シラフのじぶんを強くたもって、バカバカしい考えを屈服させなくてはいけない。

　ここを出るまで、あらゆる瞬間に、自らの心を守る番人として立たなくてはならない。できるはずだ。番人の心を鍛えるんだ。かれは、じぶんでじぶんをトラブルに巻きこむような真似はしない。偽りの声を黙らせる。結局、現実に存在しない声なんだと、番人は知っている。

　立ちあがり、洗面器へいった。上の階から降りてくる囚人たちの足音が、入り乱れていた。顔を洗いはじめた。床に、何かがスライドし、ドン、と落ちるような音。何人かの新聞配達の少年が、ポーチに新聞を投げつけるような音。やがて、臭いがした。ふり返った。まぶたについた石けんの隙間から見た。ぼくは、ウンコの爆撃を受けていた。

　ウンコは壁にへばりつき、だらだらと垂れていた。固いやつが、足下にとぐろを巻いていた。ちぎった新聞紙でまるめたやつも。囚人たちが馬のようにいななきながら、通り過ぎた。めまいがした。大きな鉛の風船が、胸の奥で膨らみはじめた。心の番人のことを考えた。だが、かれは新人で、仕事がおそかった。ぼくは吐いた。

　何度も、何度も、くり返し叫んだ、

 「よく見ろ、ただのウンコだ！ ただのウンコだ！ よく見ろ、怪我なんかしないよ。ただの臭いウンコだろ！」

　看守が、鼻をぴくぴくさせながら立っていた。

 「うるさい！」

　ドアが開いた。熱湯が入ったバケツとブラシを受け取り、そうじした。かれは、誰がこんなことをしたのか、と質問した。ぼくは、まったくわからない、と答えた。

　正午に看守がやってきた。リロイが、どうやってウンコの爆撃手を集めたのか、説明した。奴は、パパ・トニーのときのことを持ちだし、囚人たちに、ぼくはチクリ野郎だと吹きこんだらしい。これは本当の話ぽかった。爆撃手たちは同情し、ウンコでやっつけようと励ましたという。

　リロイが５日間の刑期を終えたと聞いて、ぼくは嘆き悲しんだりしなかった。

　六ヶ月めの終わり。不安、声、無数の自殺のアイディアと、心の番人が戦っていた。

　ママの友だちから電報が届いた。危篤状態だという。医師もあきらめたらしい。でも、彼女はバウンスした。重い病だけれど、生きていた。この知らせは、タフなテストだった。
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    <title>THE STEEL CASKET 6</title>
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    <published>2005-11-23T09:00:38Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　最初の１ヶ月で、体重が３０ポンド減った。５週目、悪いニュースが二つ入ってきた。...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　最初の１ヶ月で、体重が３０ポンド減った。５週目、悪いニュースが二つ入ってきた。ステイシーからの手紙。《デカいほうに賭けろ》が、自宅のトイレで死んでいたという。動揺した。本物の友人だったから。さらに、レイチェルからの手紙。
         〈あんたの友だちの医者に会ったよ。あの夜、始末をしてくれた男。酔っ払ってて、あたしに一杯おごった。バーテンダーに職業を訊かれて色々喋ってるうちに、全部ゲロッたわ。あのあと、死体は生き返ったそうじゃない。ふざけんじゃないよ。追伸：さっさと死んでね、キャデラックはあたしがもらうわ〉

　コッポラはメーン州からの出頭要請があり、移送された。ぼくの頭蓋骨への圧力は、日に日に増大した。３ヶ月目、深刻な妄想が襲ってきた。まるで、自白させるための呪い。

　ヘヴィーな麻薬なんて、看守には手に入らない。ウィスキーで我慢していた。髭を剃るのを止めた。自分だとは思えないほど、げっそりとした醜い男。鏡を見るのも止めた。もはや、監獄じゃなかった。悪夢の中に、規則正しく並べられた苦痛と苦悩の光景。

　ママは、ベッドから起きあがれなくなった。手紙を書くこともできないほど症状が悪化していた。友人が代筆した手紙や、電報を受け取っていた。みんな、彼女が天国に召される前に、ぼくが出所することを祈っていた。面会人があった。看守がついてきて、ずっと後ろに立っていた。ステイシーだった。妊娠していた。中年のハスラーと暮らしているらしい。彼女の目を見れば、ぼくがどれだけ酷い顔をしているのか、わかった。やがて、手紙は１ヶ月に１通になり、送金もしてくれなくなった。

　４ヶ月目の終わりには、脳性麻痺みたいに頭蓋骨ががたがた震えだした。あるとき、真夜中すぎに囚人のひとりが発狂した。すべての囚人を起こし、神と母親を侮辱しはじめた。看守が拘束し、ひっぱり、ぼくの監房の前を通過していった。

　こちらまで正気を失いそうな光景だった。素っ裸で、狂人にしか理解不能な言語を、泡だらけの口から発している。精霊を呼びだす呪文。両手で、勃起したペニスをしごいていた。ぼくは、まくらを顔に押しつけた。チビのビッチが鞭で打たれたとき、そうしたみたいに。

　次の日、ぼくはチーフに会わせて欲しい、と申請した。あのナチのような男だ。だが、無視された。１週間後、ひざのあいだに頭蓋骨を埋め、トイレで押し黙っていると、朝食へむかう囚人の足音がせまってきた。すぐ近くを、ぐずぐずと通り過ぎてゆく。

　見あげると、ほとんどオレンジ色に濁った二つの眼球。見覚えのある顔に埋めこまれていた。リロイだった。もう何年も前に、クリスというホーをあいつから奪ったんだ。むこうも、まだ覚えていた。ぼくを睨みつけ、やがて歪んだ笑いを浮かべ、歩き去った。

　すぐに看守を呼び、あいつの罪状を調べさせた。全部、説明してもらった。１９４０年から、リロイは１００回以上、逮捕されていた。すべて酒が原因。精神病院へ２度、収監されていた。ぼくは、４２才だった。２０才のときにクリスを略奪したんだ。あいつを他の監舎へ移すよう、訴えた。女のことをいい、奴にどれだけ恨まれてるかを伝えた。だが、看守は無理だと答えた。

　奴は、泥酔して捕まり、たったの５日間の禁固刑だった。監舎の中をうろつき廻るはず。復讐しようとするはず。５日間、注意しなくてはいけなかった。ドアから遠くに足をおいた。ナイフとか入手して、通路からハックしてくるかも。ぼくは、一日中不安にかられていた。ガソリンを撒かれ、燃やされたらどうする？
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    <title>THE STEEL CASKET 5</title>
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    <published>2005-11-22T09:00:05Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　その夜、夕食は不味いスペイン米だった。入り乱れた囚人たちの足音が近づいてきた。...</summary>
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        　その夜、夕食は不味いスペイン米だった。入り乱れた囚人たちの足音が近づいてきた。上の階へ戻っていくのだろう。９時には消灯し、けたたましいラジオも止まった。トイレの水を流す音、突然のオナラに混ざって、ぼくの名前が呼ばれた。ちょうど上にある監房で、だれかが話しているんだ。
         「ジム、アイスバーグのおっさんはどうよ。あの色男。下で白人どもが奴を殺すのに２０ドル賭けるぜ。ピンプじゃ耐えられない」

 「ジャック、あんな野郎、今夜にでも死ねばいいんだ。昔、妹がピンプに遊ばれてよ」

　眠りこけた。真夜中に目が覚めた。叫び声がする。殺さないでくれ、と懇願している。ドタン、バタンという音。起きあがり、ドアのほうへいった。コッポラがトイレの水を流した。

 「コッポラ、何があったんだ？」

 「ああ、気にすんなよ、ランカスター。夜の看守のお楽しみだよ。運動不足の解消さ。サンドバッグを、反対側の監舎から引っぱり出してる。朝の裁判にでる酔っ払いや老人だ。あんた、まだ何も見てないからな。標的にされても、口答えするなよ。地獄だ。素っ裸にされて、冷たいコンクリートの上に放置される。ここには少なくとも１０通り以上の死に方がある」

　じっと、目の前の暗闇を見ていた。レイチェルとステイシーは、どうしているだろう。手紙を書かかなくては。ピンピンについては、検閲されると思うけど・・。数分ごとに看守が通過し、こちらををライトで照らした。　

　朝になった。食事へ向かう囚人たちが、ぼくの房の前を行進していく。昨日までに移送されてきた新人も、みんないた。

　昼すぎ、ステイシーとレイチェルから手紙がきた。お金も送ってくれた。ぼくと会えないことを、悲しんでくれていた。ダウンタウンのバーで働いてるらしい。《デカいほうに賭けろ》が、いろいろ世話してくれてるようだった。

　それから１週間、ぼくはコッポラから生き残る方法を教わった。女たちに直接、手紙を届けてくれる看守もみつけた。彼女たちから賄賂を受け取り、ぼくの分の金も預かってきた。

　ママから手紙がきた。ほとんど読めないほど、ふるえた文字だった。内容は、とても宗教的だった。心配でたまらなかった。監房の狭さと、１年も閉じ込められたらどうしよう、という不安で、しだいに苦しくなっていた。たまに眠れたかと思うと、悪夢。高い金を支払って、いいものを食べてはいた。でも、痩せていった。
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    <title>THE STEEL CASKET 4</title>
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    <published>2005-11-21T09:00:40Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　ママがカリフォルニアへ帰ってから、１週間がすぎた。...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　ママがカリフォルニアへ帰ってから、１週間がすぎた。
        　３回目、最後の法廷へよばれた。ぼくは、刑務所の看守のキャプテンによる監察下におかれた。ステイシーは釈放された。

　キャプテンと補佐官は、押し黙ったままだった。４月のまばゆい光を切りとるように、刑務所のセダンが走る。ぼくは、後部座席にいた。足早に歩きまわる、幸運な市民を眺めた。こいつら、ぼくにどんな罰を与えるだろう。ゴムの鞭か、こん棒か。心がちぢんでいた。このまま車の中で死んでもよかった。

　巨大な門をくぐった。見覚えのあるビルディングを、温かい春の日射しが包んでいた。

　運動場の看守たちが、うやうやしくあたまを下げた。車の窓をとおして、ぼくを見ている。セダンは停車し、ぼくらは降りた。手錠をつかまれ、１３年前にぶちこまれていたのと同じ建物へ連行された。フラッグを取り付けてある牢屋に入れられた。

　昼すぎ、看守に付き添われ、セキュリティのオフィスへ行進した。机の向こうにいるのは、純粋なるアーリア系の突撃隊員みたいな男。ゴムの鞭も、こん棒ももっていない。フランスの鉄道に乗車したときのヒットラーって、こんな感じかな、と思うような笑いを浮かべた。声はか細くて、酔っ払いのよう。

 「さあて、檻から逃げた黒い鳥。乾杯したまえ、たったの１１ヶ月の禁固刑だ。運のいいことに、新しい法律が施行される前の逃亡だったんだ。今は、さらに刑罰が加わってる。おっと、懐古してもしょうがない。何日か、君を懲罰房に入れなくちゃ。個人的な恨みは何もない。くく、あんたが逃げたからって、あたしは何も傷ついてない。自信をもって教えてくれないか、どうやって逃げた？」

　ぼくは答えた、

 「閣下、お答えできたら、いいんですけど。フーガ、遁走曲です。ある夜、気がついたら、自由の身でハイウェイを歩いてたんです。いやはや、説明したいところですが」

　冷酷な視線が、さらに硬く、青いめのうのようになった。

　口を大きく歪ませて、笑っている。

 「フン、いいだろう、ボーイ。近いうちに、記憶が鮮明によみがえる。思い出したら、また私と面会するよう、看守に申告してくれ。じゃあ、幸運を祈るよ。また会えるかな？」

　ひったてられ、風呂へ連れて行かれた。シャワーを浴びると、ぼろぼろのユニフォームに着替えさせられた。医者による診察を済ませ、監房へもどった。フラッグのついた、不潔な小さい牢屋。これから監禁される懲罰房は、監舎の反対側にあった。入り口の前で立ち止まると、看守は鍵をアンロックした。ぼくを押しこむ。正面玄関のすぐ近くだとわかった。ぼくは、新しい棲み家を見まわした。

　人間の精神を痛めつけ、クラッシュさせるための、小さな箱。腕をあげると、指さきが鋼鉄の天井にふれた。よこに伸ばすと、やはり鋼鉄の壁にふれた。バーのついたドアから７フィートも歩くと、もう壁。折りたたみ式のベッドがあった。

　マットレスはしみだらけ。囚人のゲロとか糞の臭いがした。トイレと洗面台は、緑がかった不快な沈殿物まみれ。貧弱な頭蓋骨にとっては、１週間か２週間で、鋼鉄の棺桶と化す場所だ。どれくらい、閉じ込めておくつもりだろう。

　ドアへ歩いていった。バーをつかんだまま、目の前の、空白の壁を見ていた。

 「１週間くらい、ダンジョンに幽閉しておけば、ぼくが泣いて許しを請うと思ってるな。プッシーアウトしないぜ。こっちの頭蓋骨は強い。１ヶ月でもイケるっしょ」

　鋼鉄の壁の向こう側から、叩く音がした。痩せた白い手が、四角い紙をもってあらわれた。ぼくは手を伸ばし、受け取った。２本の煙草と３本のマッチがくるんであった。

　何か書いてある、

 「ようこそ、《幸せ通り》へ。おれの名はコッポラ。噂によると、あんたはランカスターらしい。１３年前に、火薬をまいたんだな。おれは１年半前に火薬をまいたんだ。
　６ヶ月前、連れ戻された。まじで何度も自殺しそうになったよ。すぐに、わかるだろう。いや、酷い場所だぜ。脱獄したせいで、１年、余計に過ごさなくちゃならない。しかも、メーン州から、昔やった偽札造りの罪で、逮捕令状が届いてる。
　覚悟したほうがいいぜ、相棒。俺がここに来てから、４、５人がクラックアップされてる。今、６人いる。３人は脱獄囚だ。残りは２日から１週間の短期懲罰。あとで、他のバックグラウンドも教えてやるよ。欲しいものは、看守を買収すれば手に入る」

　冷たい床に腰をおろし、煙草に火を点けた。コッポラって、ヤバイ男だろうな。６ヶ月も《幸せ通り》にいて、頭蓋骨をストレートアップしてるんだから。ぼくがここへ来てまだ数日だなんて、知らないだろうな・・なんて考えていた。
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    <title>THE STEEL CASKET 3</title>
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    <published>2005-11-19T09:00:42Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　次の朝早くにシカゴへ帰ってきた。ワシントンに指紋がとどいたら、ＦＢＩがうごきだ...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　次の朝早くにシカゴへ帰ってきた。ワシントンに指紋がとどいたら、ＦＢＩがうごきだすことは目にみえていた。すぐに街をでなくてはいけない。
        　警官のチーフは、ぼくらが乗った電車の行き先を知っているはず。《デカいほうに賭けろ》が、ペンシルヴァニアに電話してくれた。ステイシーは、翌朝には新しいハウスへ移動するはずだった。けれども、すでに包囲網がしかれた後だった。

　巡回中の警官に、ぼくと彼女は逮捕された。刑務所から派遣された看守のキャプテンもいた。ぼくは、脱獄罪。ステイシーは、ぼくをかくまった罪。ひとつ、わからないことがあった。どうしてすぐに見つかったんだろう。大都会にまぎれていたのに。

　身分を照会され、州刑務所におくられた。人生で、しょうもないミスをたくさんやらかしてきた。けど、このときのは最悪だった。バッグの中に、ステイシーからの手紙が入っていたんだ。田舎町で拘留されたとき、警官はモーテルの部屋を捜索した。そのとき、シカゴの住所がバレた。甘くみてたよ。キンタマから火事さ。

　レイチェルは、働いてたハウスからすっ飛んできた。ぼくは、無罪になろうとした。結局、どうやって逃げたのか、奴らは法廷で証明できなかった。最初のヒアリングのとき、ぼくは裁判官に、脱獄してない、といった。真夜中に看守がきて、いきなり外にリリースされました、と嘘をついた。金をつんで、不正にリリースされた友だちを知ってたから。

　薄っぺらいストーリーだったが、刑務所に逆戻りする前に、カマしてみたんだ。次の刑期では、最悪なことしか起こらないと確信してた。《デカいほうに賭けろ》が、たまに訪ねて来てくれた。なんでもしてくれた。でも、ぼくは負け犬。だれにも救うことはできない。

　ママもカリフォルニアから来てくれた。おばあさんになり、病気をしていた。心臓病と糖尿病。じっさいの話、死が近づいていた。会いに来られたことが、奇跡だった。何度も経験したシーンさ。ぼくは、牢屋の中。彼女は、外で泣いてる。

 「あんた、これが最後だよ。もう会えなくなる。ママは疲れたよ。神様のおかげで、なんとかここまで辿り着いた。お母さんは、あんたを愛してるよ。どうして、わかってくれないの」

　ぼくは泣いた。バーのすきまから、痩せ細った、青白い手を握りしめた。

 「さあ、よくみて。インディアンの血が流れてるだろ。ママは死んだりしないよ。おじいちゃんのパパ・ジョーを思い出して。あの人みたいに、１００才まで生きられるさ。ねえ、元気をだしてよ、ママ。泣かないで。すごく心配してるんだ。愛してる。本当だよ、ママ。いつも手紙に書かなくてごめんね。愛してるよ、ママ。おねがいだから、死なないで。必ず、出てくるから。したら、いっしょに暮らそう。誓うよ、ママ。とにかく、死んじゃヤだよ！」

　看守がきた。これで、終わりだった。ママをみて、かれの厳しい表情がやさしくなった。不治の病に冒されていることが、分かったんだろう。刑務所の通路を、ゆっくりした足取りで遠ざかっていくママの姿を、ぼくは見ていた。エレベーターに乗ると、振り返って、こっちを見た。悲しい、哀れみにあふれた顔。ずっとまえ、最初に刑務所に移送された日のことを、思い出した。雨の中に立ち尽くしたママが、バンに乗せられたぼくを見送ってくれた、嵐の朝を。いま、こうして思い浮かべるだけで、感情の塊が、喉の奥からこみあげてくる。
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    <title>THE STEEL CASKET 2</title>
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    <published>2005-11-18T03:20:18Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　若くてエロいほうのホー、ステイシーをモンタナのハウスへうつした。３月のことだっ...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　若くてエロいほうのホー、ステイシーをモンタナのハウスへうつした。３月のことだった。春のあいだだけ、いかせることにした。だから、６週間に１度、あっちへ行って、彼女にサービスし、ゲームをタイトゥン・アップしていた。寂しがってた。会いたくてたまらない、って。
        　やがて、マダムと上手くいかなくなって、同じ町の男が経営している他のハウスで働くことになったという。彼女を訪ねるまえに、《デカいほうに賭けろ》の意見を聞いた。

 「アイス、聞く耳もたず、だろうな。新しいキャデラック、すぐ買っちまうようなバカだから。今回はもっと重要だぜ。おまえも行く必要ないし、ビッチも働かせないほうがいい。あの男のことは知ってるんだ。ヘビだよ。女を預けちゃダメだ。ペンシルヴァニアに、いいハウスを知ってる。２日以内に、そっちへ移動させろ」

　でも、きかなかった。電車で会いにいった。はずれのモーテルに宿泊。《ジョニー・カト》って名前にした。町にいる黒人といったら、ハウスのホーと流れてきたピンプだけ。

　早朝、仕事を終えた彼女が、モーテルを訪ねてきた。ある日、目がさめたら、ボスがベッドにもぐりこんでた、と告白された。思わず、黒の真鍮の時計で殴ったわ、って。でも、チルしなかったらしくて。あたまから血を流しながら、５０ドルだして、チンコだして、おねがいします、だって。おれのホーになれよって。こんな話を聞かされて、ぼくもビッチな気分だった。

　３日目、日曜日の夜９時ごろ。ステイシーは、日曜日は働いてなかった。ぼくらは、じゃれあっていた。ぼくは、パジャマを着て、ポケットにコカインを入れていた。煙草に火を点けたとき、警察っぽいノックの音がした。ドアのほうへいった。

 「イエス、だれ？」

 「警察だ、ドアをあけなさい」

　あけた。赤ら顔のスウェーデン系の警官がふたり。ひとりは豚。ひとりはひょろ長い。震える手をパジャマのポケットにかくした。指さきが、焼けるほどホットなコカインのキャップに触れた。ぴよった顔をしてないことを祈った。歯をみせて笑った。奴らは部屋に入ってきて、まん中に立った。すばやく見まわしている。ステイシーはぽっかり口をあけたまま、ベッドにいた。

 「えっと、ジェントルメン、どうすればいいですか？」

　ひょろ長いのがいった、

 「身分証をみせなさい」

　クローゼットへいき、ニセモノの《ジョン・カト・フレドリクソン》名義の身分証をとってきて、手のひらにのせてやった。背中を冷たい汗が滴り落ちた。奴らは、チェックしあっている。

　ひょろ長いのが、

 「おい、法律違反だ。モーテルにチェックインするとき、なぜフルネームでサインしなかった。隠してることでもあるのか？　この町で何してる？　ダンサーとかいてあるが、ショーをやってるクラブなんか、ないじゃないか！」

　こう答えた、

 「おまわりさん、芸名が《ジョニー・カト》なんすよ。隠しだてすることなんて、何もないです。劇場だと、長すぎる名前でしょ。だから、ちょっと短くするクセがついてるんです。昨年、足をやっちまいまして、もう踊れないんです。妻とビジネスをやろうとしてます。ここらのカントリーを、旅してるんです。あなたがたの町で、南部フライドチキンの店をやるのにいい場所はないですか。こいつの秘密のレシピで、リッチになりたいんです」

　豚がいった、

 「おまえ、よくそんな嘘ばっかりいえる黒人の、メス犬の息子だな。この町にくるニガーなんて、新しくハウスをひらきたい野郎か、ホーのマンコをナメナメしにきてるか、どっちかなんだよ。このビッチと結婚してないだろ。おまえは生活水準の低いピンプで、そいつはホーだろ。ちゃんと観察してたんだよ。ボーイ、いいか、ニガーのお尻を町の外にだせ。いらねえよ、おまえなんか」

　ぼくは、

 「ハイー！　レストランのことは、忘れます」

　警官は、まわれ右をして、帰っていった。ぼくは、ステイシーのボスがチクッたことを理解していた。でも、シカゴへ戻る電車はもうない。１日に１本、夜８時だけ。連中がまたくることは、間違いなかった。ハメられたんだ。ラジオのニュース速報で、ハイウェイに雪が積もっているという。町から出られない。とりあえず、コカインを吸って、どうしようか考えた。

　次の日の昼３時ごろ、警官のチーフがやってきた。

 「ボーイ、ひっかかるんだ。ニセの身分証のことは、忘れるとしよう。だが、もっとシリアスな問題がある。おまえとこの女は、合法的に結婚したのか？　違うとしたら、見過ごせん。いつ、どこで結婚したのか、おしえてくれよ」

　あたまをフル回転させた。新聞でみた、どっかの裁判所が火事になった話を思い出そうとしたけど、ムリだった。

 「いや、３年前、テキサスのワコです。なんで疑われるのか、わからないすけど」

 「じゃあ、これから署へ連行する。おまえの話をチェックしていくから。本当のことをいってたら、問題ないんだから。嘘つくなよ。嘘ついてたら、刑務所だからな」

　ぼくらは連れていかれ、マグを撮影され、指紋をとられた。

 「ボーイ、おまえ、嘘ついてんじゃねえかよ。ワコに電話したんだよ。おまえらの記録なんて、なーんもねーんだよ」

　で、投獄された。１時間後、ひとり２００ドル払って、保釈された。ふたりで、とぼとぼ歩いて、タクシーをつかまえ、モーテルへ帰った。時間がなかった。もう、奴らは探しはじめてるだろう。ハウスから彼女の荷物をとってきて、駅のベンチに座って夜８時の電車を待った。
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    <title>THE STEEL CASKET 1</title>
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    <published>2005-11-17T07:15:33Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　シアトルにも飽きた。１９５８年。継父は死んでしまい、ママはカリフォルニアにひと...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　シアトルにも飽きた。１９５８年。継父は死んでしまい、ママはカリフォルニアにひとりぼっち。手紙は、悲しみと孤独に満ちていた。ホーは、レイチェルとエロい女だけだった。
        　麻薬を止めてから、体重は５０ポンド増えた。２００ポンド以上になった。時の流れは、ぼくの前髪を禿げさせた。あの脱獄のときのマグ写真とは比べものにならなかった。

　大麻は少しだけ吸った。コカインも、ときどき。一度だけ、コカインといっしょにヘロインもイッたかな。やっぱり、スピードボールはよかった。完全に断つのは、無理だよ。

　４０才になるころ、ぼくはピンプとして遺跡だった。高価なスーツに身を包んだアザラシ。長い年月の中で、初めて健康的な食欲があった。ぼくは、スローダウンしていた。ほとんどの時間を、ベッドで本を読んで過ごした。ピンピン・キャリアの終わりもすぐそこ。

　シカゴへ帰ることにした。ぼくの巣。ダウンタウンの近くで、２人のホーを働かせた。客のほとんどは白人。すぐそばにあるいい感じのホテルに宿泊した。女たちは、同居させた。３ヶ月後、火事がおきた。おかげで、ぼくのピンピンは、すっかり変化した。いろいろあって、結局、脱獄囚として逮捕されることになるんだけど。

　ある日、散歩をしていた。アパートメントの窓が燃えだしたから、立ち止まって眺めていた。隣で、茶色い髪の老人も見ていた。この男、ハスラーだった。博打をやりながら、１０州に渡ってハウスを経営してた。火事見物が終わると、ぼくらは一杯、飲みにいった。意気投合して。翌月なんか、毎日会ってた。かれのハウスを見せてもらうために、足を運ぶようになった。

　ピンプとして、ハウスで働くホーのことは軽蔑していた。マダムに５０パーセントももってかれるから。優れたホーは、ストリートで客を引くべき、というのが信念なんだ。オハイオでハウスをやってたときすら、通りで客引きさせたよ。

　怠け者の、中途半端なホーが、ハウスで働くんだ。客を待ってるだけ。ぼくの友人、《デカいほうに賭けろ》は、ハウスはぼくにうってつけだ、と説得してきた。「服（wear）も苦労（tear）もいらなくなるぜ」というのがポイントだった。ハウスの中は安全だし、マダムは脱走に気を配ってる。女のコたちも、ピンプとの面倒な関係を気にしなくていい。

　でも、ピンプの儲けは、５０パーセントになるんだ。でも、かれの話だと、ぼくくらいの年齢のピンプだと、ハウスの方が稼げるっていうんだ。したら、じぶんでもオープンして、手広くやって、１００才まで生活できるって。ストリートの激しさの下では、老人になるまで生きるのはムリだと思ってた。

　２ヶ月後、２人のホーをハウスに預けた。毎週月曜日に、書留めでお金が届くようになった。かれの言ったとおり、ピンピンが簡単になった。５０パーセントは間違いなく、もらえたし。

　１、２ヶ月ごとに、女たちは戻ってきた。それ以外の時間、ぼくは《デカいほうに賭けろ》と遊んでいた。ホント、仲良くなったよ。あの人のアドバイスを聞かずに、５９年型のキャデラックを買ったときなんか、カンカンになって怒ってた。

　父親のように慕っていた。博打のサイコロの目と同じくらい、人の心がよくわかってる人だった。友情と知恵に支えられて、ヘロインにも手を出さずにすんだんだ。かれがいなくて、刑務所にいかなかったら、絶対、またヤッてたな。じっさい、何度もヤろうとしてたから。
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    <title>STABLE MOVES 6</title>
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    <published>2005-11-16T09:00:31Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　ぼくが西海岸に来たので、ママはにっこりした。新しい父親とやらは、ホント、いいお...</summary>
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            <category term="20 STABLE MOVES" />
    
    <content type="html" xml:lang="en" xml:base="http://ghetto.jp/dog/">
        　ぼくが西海岸に来たので、ママはにっこりした。新しい父親とやらは、ホント、いいおっさんだった。大きな家に住んでいた。ロスアンジェルスは、噂よりも酷かった。２日目の夜、ママのクーペを借りて、ホーとピンプがストンプしてる区画へいったよ。
        　何週間かすごしたあと、シアトルへ移動した。グラス・トップのことは、だれも知らなかった。ある男によると、死んだという。

　この土地で、エロい女をコップした。運がよかったな。クリーヴランドに残してきた女のうち、ひとりは死んでいた。盲腸が破裂したんだ。ぼくは、３人を呼びよせた。

　半年後、ぼくの運命はすっかり変わっていた。ネタはすっかりなくなった。しかも、ここのヘロインは純度６パーセント。スプーン３杯はいかないと、落ちつかない。女たちは、しゃかりきになって働いてたけど、ぼくの心には、何の欲望もなかった。

　ある日、キャデラックの座席にぼさーっと座っていたら、年食った、しわしわの男が歩いていった。戻ってきて、身をかがめ、ぼくの顔をじーっとのぞきこみ、

 「アイス！ 俺の古いピンピン友だち！」

　よーくみたら、グラス・トップだった。乗ってきた。禿げかかった髪を、撫でている。ずっと、州刑務所に入ってたらしい。もう、ピンピンしてなかった。カタギのババアに食わしてもらってるって。酔っ払ってた。街を離れるまで、ボトルを買ってやり、話し相手になってやった。ぼくが去ってから２日後、死んだそうだ。

　また、偶然、ヘレンの子どもを堕ろした医者に会った。ライセンスを剥奪され、短いあいだ服役したあと、東部でまた、モグリ営業してるという。話が盛りあがった。お互い、ほとんどのハスラーを知ってるから。ぼくの顔色が悪すぎる、という。ヘレンを連れて来たとき、どれだけハンサムだったか、といわれた。

　血液を採られた。なんか、体がヤバイらしい。シャレにならないから、クスリを止めることになった。しょうがないから、言う通りにした。何もかも、指示に従え、という。家をもってて。昔ながらのやり方で、金は稼いでた。

　ぼくが、完全なるヘロイン中毒なのを知ってるのは、レイチェルだけ。他のホーは、知らなかった。とにかく、医者の家にずっといた。町にいないと思われてたくらい。

　少しずつ、量を減らしていくんだけど。ついに、いっさい止めて、掻きむしるわ、吐くわ、の状態。ホント、あの医者、どれだけ叫んでも動じないんだ。マジ、泣き喚いたよ。でも、すぐ注射されて、トランキライズ。弱音を聞く耳をもってないんだ。インフルエンザの増幅された感じ。痛みが何千倍のやつていうか。悪い習慣を断つのは、たいへんだよ。

　２週間かかった。へろへろだったけど、食欲は馬なみになった。さらに２週間後、ここ何年かで、いちばん健康になった。いや、医者はヤバイよ。マイメンだね。あの人が助けてくれなくて、１９６０年までヘロインやってたら、鉄の棺の中で、とっくに朽ち果ててただろう。

- つづく -
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    <title>STABLE MOVES 5</title>
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    <published>2005-11-15T09:00:11Z</published>
    <updated>2006-04-24T14:14:58Z</updated>
    
    <summary>　しばらく、彼女を見下ろしていた。リーヴェンワース刑務所でのタフな日々。忘れてな...</summary>
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        　しばらく、彼女を見下ろしていた。リーヴェンワース刑務所でのタフな日々。忘れてない。ここにいやがったか、フィリス。まさかの光景を目にして、発狂しはじめた。
        　ドレッサーから、コロンの瓶をとり、キャップをはずした。ネタの入った袋をとりだし、純度２０パーセントのヘロインを入れた。ジャンキーでも死ぬ量だ。彼女は、やったことないはず。

　床に、水の入ったボトルがあった。この水をキャップに注ぐと、マッチを擦った。その火で炙りながら、注射器で吸いとった。これで、復讐してやる。

　彼女のひざの裏の静脈に、注射器の針を刺した。血液が逆流してきた。あとはバルブを押しこむだけ。窓を見た。さっきのジョーカーが、通りを駆け足で横切るのが目に入った。トランクを抱えて、ホテルの玄関へむかっている。

　動きを止め、針をぬいた。しょうがないから、注射器の中身を靴の下にだした。ネタが入った袋を、ショーツの内側にピンで留めた。リビングルームのソファにぐったりと座りこんだとき、男が戻ってきた。なんだか、地獄のように汗をかいてしまった。それを見て、男は疑わしい目をした。目の片隅で、女も見ている。

　奴がいないあいだに、女とヤッてたと思ったんだろう。こいつら、どれくらい付き合ってるんだ、と考えていた。この男も、悪党だから。彼女の素性を理解したら、別れるだろう。遅かれ、早かれ、だれかが教えるな。で、チビのビッチのせいで、アイスバーグが刑務所にぶち込まれたことを知るはず。とりあえず、買い物をした。隙をみて、男はベッドルームにすべりこみ、フィリスがヤられてないか、確かめてた。

　さて、１ダースばかりいろいろ買って、おいとました。これからカリフォルニアで着ることになる服。男には、今後の予定を聞いておいた。何週間か、クリーヴランドにいると言っていた。じゃあ、ぼくはこの街を離れなくては。いま、すぐに。

　フィリスは、ぼくがいるという情報をすぐにゲットするはず。したら、警察に電話するためのコインを公衆電話に投入するのを、ためらわないはず。脱獄のことも知ってるな。車を飛ばした。あの女、へべれけになってるとき、ぼくとふたりきりだった、なんて聞かされたら、どんな顔をするだろう。

　夜、ロスアンジェルスへ飛んだ。ボトムのレイチェルがホーとお金を完璧に管理してくれてたのは、ファビュラスだった。見事に騙されてる彼女とぼくは、運命共同体。キャデラックにステイブルを乗せ、あとから追いつくことになっていた。
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    <title>STABLE MOVES 4</title>
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    <published>2005-11-14T09:00:53Z</published>
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        　ママは、ロマンスを実らせ、お金のこともかんがえて、ロスアンジェルスへ移住した。毎週のように電話してきて、訪ねて来て欲しい、といった。しばらく滞在して、新しいお父さんにも会わせたいから、って。でも、カリフォルニアのヘロインは純度が６パーセント、なんて噂があった。ピンプは面白半分で、ピンピンしがいのない土地らしかった。
        　西海岸へいってカッコついたピンプなんて、いない。だいたい、引き揚げてくる。なんでも、ホーはぐうたらで、お小遣いを稼ぐくらいらしい。西のピンプがヘボすぎるよ。

　だから、ぼくは自分自身に、「西はない、ない」と言い聞かせていた。訓練したホーたちを、わざわざ危険で面白半分なシーンに連れて行く理由がない。糞ド田舎で、ファミリーを失いたくない。

　３４才になっていた。カタギの職業だって、自分なりのやり方を確立している年齢だ。ピンプとしても、上の世代になっていた。女たちには、ストリクトリーにせっしていた。

　このころ、レイチェルが、ステイブルの中に泥棒女がいる男が街に来て、リリー・アンとか、ペトロセッリのスーツを２０パーセント引きで売っている、という話を伝えた。翌日には、その男の電話番号を教えてくれた。

　電話して、ストックを見せてもらう約束をした。大事な用事のときしか、アパートを出ないようにしていた。行く前に、フレッシュな服に着替え、一服してから出かけた。

　男は、イースト・サイドの安ホテルにいた。３部屋ある室内におかれた衣装ダンスに案内しながら、こちらの経歴を、うやうやしくチェックしてきた。

 「アイスバーグかい？　ハ？　昔、同じ街に住んでたよ。フィリス、いい女だったね」

　ぼくの名声と、シカゴでピンピンしてたことを知ってた。

 「イエス、アイスバーグさ」

 「レッドアイっていたよね。かれはどうしてる？　ニューヨークで一度、見たんだ、先月かな。あいつもピンピンしてたなあ。あんたなら、知ってるだろ？」

　ぼくは、オカマを見る目で見てしまった。

 「おい、よく聞け、ジャック。ブルシットやめろや。レッドアイなら知ってるよ。先月、見た？　医者に行け。どうかしてるよ。あいつは、５年前にピッツバーグで人を殺し、逮捕された。今ごろまだ、刑務所だぜ？」

　男は、鼻水をいっぱい飲んだようなキモイ笑いを浮かべた。体のサイズを測り終えると、自分の部屋でクールしてくる、と言って、通りの反対側にある建物へ行ってしまった。

　小さなベッドルームを眺めた。裸の女が寝ていた。

 「おや、どんなタイプの犬だろう」

　ベッドまでいき、見下ろした。へべれけに酔っ払い、ストーンしてるようだった。チビのビッチみたいだ。ポッチャリして、太り気味だけど。確認する方法がある。ハンガーのムチで流血させた傷あとだ。まだ、消えてないはず。女をひっくり返し、腹を見た。そこには、バッチリ傷があった。
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